海外にお住まいの方の「給付金」手続き

ホームページのコラム開設にあたり、ネットらしい話題から初めてみたいと思います。このホームページ、海外でも読むことができます。もしかして、いま、海外からお読みではありませんか?

東京弁護団では、海外在住の被害者の方々に対しても、ご相談や訴訟手続きを行っています。海外にお住まいのまま「給付金」を受給された方もいらっしゃいます。

●海外にお住まいの方でも受給の手続きはできます。

B型肝炎訴訟の条件や手続きは、海外、国内、どこにお住まいでも同じです。

救済対象は、幼少時に日本に居住し、集団予防接種における注射器の使いまわしによってB型肝炎ウイルスに持続感染させられた方。逆に言えば、現在、国内にお住まいでも「満7才の誕生日」まで、ずっと海外にお住まいだった方が受給するのは難しいでしょう。

具体的な手続きでは、「訴訟のために帰国が必要か」という質問をいただきます。法廷に行かなければならないと心配される方が多いようです。しかし、弁護士が代理人を務めますので、その必要はありません。

やりとりは電子メールや郵送が中心のようです。郵便事情の悪い地域にお住まいの方には、お申出があれば、EMS郵便を使うこともあります。

ご家族や親戚などが国内にいらっしゃれば、訴訟に必要な資料集めも帰国せずにすむかもしれません。ただ、別の目的であれ、一時帰国時には、弁護士とうちあわせをしたり、資料を集めたりする方は多いようです。

「給付金」の海外送金の場合でも、特有の面倒はありますが、きちんと対応させていただいています。

無症候性キャリアの「定期検査無料化」は海外居住も対象ですが…。

さて、もうひとつ触れておきたいのは、海外にお住まいの「無症候性キャリア」の方についてです。

「無症候性キャリア」の方の給付金は、原則として50万円にしかなりませんが、ご承知のとおり、いちど過去の予防接種の被害者と認定されておけば、将来に発症したとき、簡易な手続きだけで、新しい病態に応じた「給付金」の金額とこれまで受けとった金額との“差額”(追加給付)が受けとれます。この部分は、海外の方も変わりません。

また、無症候性キャリアの方には、「政策対応」として、毎年の定期検査費用の無料化(「受給者証」を医療機関に出せば対象検査の窓口負担なし。年間の回数制限など条件あり)などのメニューがあります。

あまり知られていませんが、これらの制度も、海外にお住まいの方が利用することができます。

ただし、そのときの具体的な手続きはどうなるのか…。実はまだ制度を利用した方がいないため、詳細が未定の部分も残されています。「受給者証」は海外では使えないでしょうし、為替レートはどうするか、などなど、国の担当者もつめなければならない課題の存在を認めています。

ただ、これまで利用実績・利用の申請が一件もなく(昨年暮れ時点)、具体化をするため、国も「第一号」となる方の申請を待っているようです。

無症候性キャリアの場合、当面の「給付金」が50万円ですから、とくに海外にお住まいの方については、訴訟をためらうお気持ちもよく理解できます。

ただ、日本に多かったジェノタイプ型のB型肝炎ウイルスでは、肝機能値が正常でも、加齢にともない、突然、肝がんが発症することもあると知られています。肝臓専門医の方々が強調されているように、無症候キャリアの方も定期検査を受けることは大切です。それは海外在住でも変わらないのではないでしょうか。

海外にお住まいのキャリアの方からのご相談自体はそれなりにあります。制度利用の「第一号」になって、道をきりひらく先頭にたってみようという方はいらっしゃいませんか。弁護団も一緒にがんばりたいと思います。

(東京弁護団・弁護士 菅俊治)