B型肝炎訴訟・第3回和解協議における国の和解案について
全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団の見解が発表されておりますので、ここに転載いたします。
2010年9月1日
B型肝炎訴訟・第3回和解協議における国の和解案について
全国B型肝炎訴訟原告団
全国B型肝炎訴訟弁護団1 本日、札幌地方裁判所の第3回和解協議において、被告国から「和解の全体像に関する国の考え方」と題する書面が示された。この「考え方」は、前回の和解協議期日において「できるだけ早期に全体案を提示すべき」という裁判所の見解が出されたことにより提示されたものであるが、母子手帳に代わる立証方法、和解金額そしてキャリアに関する考え方が示されたものの、全体解決案としては全く不十分なものであるだけでなく、キャリアをはじめとして被害者の多くを切り捨てるとともに、賠償額を不当に低く抑え込もうとするものである。
すなわち、国は、キャリア状態にある被害者に対して、①除斥期間の問題があること、②慢性肝炎を発症する割合が相当程度低いから、キャリアに対する一時金賠償は行わないとしている。しかし、接種時から20年を経過したとして除斥期間を問題にするとなれば、ほぼすべてのキャリアが請求権を失うことになる。そもそも、国は、先行訴訟の提起から現在に至るまで20年間余にわたって責任を争ってきたのであり、その国が、その間に20年経過したから請求権が消滅すると主張すること自体、著しく正義に反し到底許されるものではない。また、キャリアは、発症の恐怖や他者への感染の懸念から自制した生活を余儀なくされ、あるいは社会的な偏見にさらされるなど多大な被害を現実に被っている。国は検査費用等の負担を言うが、その他の被害を一切救済しないことはまったく不当である。
救済水準(和解金額)について、国は、具体的な金額は何ら示さなかった。これでは全体案とは言えない。なお国は、「平成18年最高裁判決の基準を踏まえた合理的な水準」とすべきであるとしているが、平成18年最高裁判決の認容額は、慢性肝炎とキャリアに共通する「持続感染者になったこと」についての精神的損害だけを評価したものであって、それ以上の損害については含まれていない。最高裁判決を基準にするというのであれば、そこに含まれない損害についても正当に評価して損害額を算出すべきである。
さらに、国は、母子手帳に代わる代替案として、予防接種台帳か接種痕に関する医師の意見書などを求めているが、現実には予防接種台帳は短期間で廃棄処分されるものであって残っていないことは明らかであり、接種痕についても、接種痕の残らない予防接種も多く、接種痕の残る予防接種であっても接種痕は時の経過や体質によって消えるものであり、非現実的な証明を求めるものであって、代替案になるものではない。
2 以上のとおり、本日提案された国の「考え方」は、全体として被害者切り捨ての「考え方」であり、受け入れられないものである。国には、キャリアを含め一人の被害者も切り捨てることなく、被害者の被害に見合う水準の解決案を、一日も早く提示することをあらためて強く求めるものである。
以上
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