B型肝炎訴訟の歴史

長いたたかいによって作られた「基本合意」と給付金制度

thumb_introduction21989(平成元)年、5人のB型肝炎患者が、被害救済を求めて札幌地裁に国を提訴しました。2006(平成18)年に最高裁判所は国の責任を認め、賠償を命じる判決を下しました。それにもかかわらず、当時の国は、5人以外にたいする救済策は実施を拒んだのです。そのため、2008(平成20)年から全国各地でいっせいの提訴がはじまりました。

2010(平成22)年から札幌地裁の和解勧告があり、2011(平成23)年6月28日、国と私たち原告団・弁護団は「基本合意」をむすび、翌年1月には、「給付金」を支給するための特別措置法も作られて、被害者救済の道がひらかれました。

現在も、私たち原告団と弁護団は、被害者にたいするすみやかな個別救済(給付金の支給)と、すべてのウイルス性肝炎患者が安心して医療を受けられる体制整備を求めて活動を続けています。

基本合意の内容

全国原告団代表(当時)と菅首相が握手(提供:読売新聞社)
全国原告団代表(当時)と菅首相が握手(提供:読売新聞社)

①国が責任を認めて正式に謝罪すること
②和解対象者の認定要件と和解金の金額
③国は、患者が不当な偏見・差別を受けることなく安心して暮らせるように啓発・広報に努めるとともに、肝炎ウイルス検査の一層の推進、肝炎医療の提供体制の整備、肝炎医療に係る研究の推進、医療費助成等の必要な施策を講ずるよう努めること(「恒久対策」
④国は、集団予防接種等の際の注射器の連続使用によるB型肝炎ウイルスへの感染被害の真相究明及び検証を第三者機関において行うとともに、再発防止策の実施に最善の努力を行うこと(「真相究明」「再発防止」)。
⑤国は、上記③④の施策の検討にあたり、原告の意見が肝炎推進対策協議会等に適切に付されるよう、当原告団・弁護団と協議・調整する場を設けること。

この「基本合意」にもとづき、①被害者のすみやかな個別救済(「給付金」の支給)とともに、②ウイルス性肝がん・肝硬変への医療費助成の創設などについても、原告団・弁護団は国との協議などの活動をしています。

全国B型肝炎訴訟 略年表

1940年代から
イギリス保健省が血清肝炎(B型肝炎)の感染と注射器の関係を検討。注射針及び筒の使い回しや従来の滅菌方法の見直しの必要性を示唆。
1948(昭和23)年
肝炎が「注射器により伝染する」「注射器及び針が危険である」との指摘が、日本国内でもなされる。種痘・予防接種の接種方法について被接種者一人ごとに種痘針・注射針を消毒することを国が指示(「予防接種施行心得」。現場には周知徹底されなかった)。
1953(昭和28)年
WHOが血清肝炎(B型肝炎)の感染力の強さ、針のみならず筒の感染の問題、集団予防接種における注射器の使い回しが血清肝炎(B型肝炎)を引き起こす危険について指摘。
1958(昭和33)年9月
注射針を被接種者ごとに取り替えることを国が義務づけ(この規則も周知徹底されなかった)。
1988(昭和63)年1月
予防接種における注射器の被接種者ごとの取り替え及びツベルクリン反応検査での注射針・筒の取り替えを国が指導。
1989(平成元)年
集団予防接種の注射器連続使用によって感染したB型肝炎ウイルス患者の被害賠償を求めて、5人の原告が札幌地裁に国を提訴。
2006(平成18)年6月16日
最高裁が国の責任を認める原告勝訴の判決。
ただし、国は他の被害者に対して救済する姿勢は示さず。
2008(平成20)年
集団予防接種によってB型肝炎に感染したすべての被害者にたいする救済を求めて、全国10の裁判所に提訴。
2009(平成21)年5月27日
「もう待てない!B型肝炎訴訟最高裁判決勝利3周年集会」を開催。
歌手の石川ひとみさんも「B型肝炎を克服して」と特別講演。
2010(平成22)年12月28日〜
すべてのB型肝炎被害者に対する謝罪と解決の政治決断を求める「真冬の座り込み宣言」として真冬の日比谷公園で徹夜の座りこみ。

※このように「基本合意」締結は、法廷での論争とともに、国会議員・政党への要請、街頭でのよびかけなど、広く粘り強い活動によって実現しました。
2011(平成23)年1月11日
札幌地裁が国に和解内容を勧告する「所見」を示す。
2011(平成23)年3月11日
東日本大震災。当時、よりよい内容の「基本合意」をめざして要請などを続けていた原告団・弁護団の活動にも大きな影響を与えました。
2011(平成23)年6月28日
国と原告団・弁護団が和解にかんする「基本合意」を締結。菅直人首相(当時)が「拡大を防ぐ努力が結果として十分でなかった。国を代表して心からおわびする」と謝罪。
2012(平成24)年1月13日
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法成立。
2016(平成28)年1月15日現在
提訴者数 1万7120患者
(原告1万8656人)