B型肝炎訴訟(除斥裁判) 東京地裁  勝訴判決

 令和4(2022)年10月25日、東京地方裁判所は、集団予防接種が原因のB型慢性肝炎を、提訴から20年以上前に発症し、沈静化した後に再発した原告3名に対し、請求を認容する勝訴の判決を言い渡しました。

 


 

令和4(2022)年10月25日
全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団

声 明

1 本日、東京地方裁判所は、集団予防接種における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染し、提訴から20年以上前に慢性肝炎を発症し、鎮静化した後に再発した原告3名に対し、請求を認容する勝訴の判決を言い渡した。
 令和3(2021)年4月26日、最高裁判所第二小法廷(三浦守裁判長)は、集団予防接種における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染し、慢性肝炎を発症し、鎮静化した後に再発した九州の原告2名に対し、最初の慢性肝炎発症時を起算点として除斥期間(改正前民法724条後段)を適用した福岡高等裁判所の判決を破棄し、逆転勝訴の判決を言い渡した。
 本日の東京地方裁判所の判決は、最高裁と同種事案に対し、最高裁判決後のはじめての裁判所の判断である。

2 先の最高裁判決後、最高裁判決の対象者である2名については、差戻審である福岡高等裁判所において和解協議が行われたが、国の控訴取り下げにより、福岡地方裁判所の原告側勝訴判決が確定した。そして、引き続き、後続の九州の原告7名の事件が係属している福岡高等裁判所において、除斥案件の全体的な解決を求める和解交渉が行われてきた。
 先の最高裁判決の三浦守裁判長の補足意見では、「極めて長期にわたる感染被害の実情に鑑みると、上告人らと同様の状況にある特定B型肝炎ウイルス感染者の問題も含め、迅速かつ全体的な解決を図るため、国に協議を行うなどして感染被害者等の救済にあたる国の責務が適切に果たされることを期待する」とされた。極めて的確な指摘であり、これに基づいて、原告団・弁護団は、除斥事案の全体的な解決を求めてきた。
 しかしながら、国はきわめて狭い範囲の原告に絞って和解を打診する一方で、その他の多くの除斥事案では除斥の主張を維持するという態度に終始してきた。本日の東京地裁判決の3名についても、国は従来の除斥の主張を撤回し、訴訟上の和解を打診してきたものであった。福岡高等裁判所における交渉に具体的進展がないまま最高裁判決から1年半が過ぎ、東京地方裁判所もこれ以上の長期化は許容できないと考え、本日の判決となった。

3 今後この判決を元に、国は一部原告についてのみ和解に応じるという対応を改め全体解決をはかるべきである。
 最高裁判決の後も、国が和解に応じないとしている原告も、長期間、慢性肝炎で苦しんできたのである。国が権利行使ができない段階での権利行使を求め、除斥を主張するのは著しく不合理である。これらすべての被害者に対し、国は加害者として誠実に向き合い、迅速に解決のための協議を行うべきである。
 我々は、不合理な除斥の壁に立ち向かう被害者全員の救済を求めて、全国の原告団、弁護団、支援者と一丸となって闘い続ける決意である。

以上


 

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