8月1日、厚生労働大臣との協議が行われました

2014年8月1日,私たち全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と田村憲久厚生労働大臣との定期協議が厚生労働省の大会議室にて行われました。
厚生労働大臣との定期協議は,2009年の国との基本合意に基づいて実施されており,今年で3回目です。今年の協議テーマは,①肝硬変・肝がんへの医療費助成の実現②差別・偏見の克服に向けた取り組み③再発防止のための国の対応,の3点に設定しました。
はじめに田中全国原告団代表から,昨年の大臣協議で訴えた高橋北海道原告団代表や榊原九州原告団副代表がこの1年に相次いで亡くなったことが紹介され,肝がん・肝硬変患者には時間がなく,医療費助成を一刻も早く実現してほしいとのあいさつがなされました。

厚労大臣協議(田村厚生労働大臣)

①医療費助成制度
肝硬変・肝がんへの医療費助成実現については,50万以上の請願署名を集めた実績を踏まえて,東京原告団のOさんから,再発する肝がんや肝硬変の治療のために16回もの入院を繰り返し医療費負担が大変に重いこと,定年直前に高校の校長職を早期退職せざるを得なかった無念さや予防接種時の注射器使い回しによる被害者としての思いを大臣に訴えていただきました。また,佐藤全国弁護団代表から,薬害・予防接種・輸血などの医療行為によって広がった医原病であるウイルス性肝炎については,他の病気とは異なる国の対応が求められることが明らかにされました。

■田村大臣は制度の早期実現と回答-「5年,10年ではかかりすぎ」
これに対して田村大臣からは,肝硬変・肝がんの医療費助成については,他の疾病とのバランスといった難しい問題があるが,それを乗り越える考え方があることも理解できる,財源などの問題もあるが,「問題を乗り越える一つの方法として,議会との協力がある」「5年,10年とかかっていたのでは,これは時間がかかりすぎというのも確かであります」との回答がありました。

■制度実現に向けて継続的に活動をしていきましょう!
今回の大臣回答は,「議会との協力」のもとに様々な困難を乗り越えて,肝硬変・肝がん医療費助成を実現していく方向をとっていくことを厚生労働省が表明したものです。これは,私たちB型肝炎訴訟原告をはじめとする多くのウイルス性肝炎患者らがこれまで積み重ねてきた運動がかちとった貴重な成果です。
この大臣回答を受けて,「5年以内にウイルス性肝硬変・肝がんの医療費助成開始へ」との報道もなされましたが(8/2読売新聞),これから本格化する「議会との協力」,例えばウイルス性肝炎問題に取り組む議員連盟が立ち上がった場合に,私たち自身がこれに強力に働きかける活動がとても大切です。そうした活動を今後とも着実に継続することが,医療費助成の実現を確実に,少しでも早い時期に獲得するために求められています。

②B型肝炎患者への差別・偏見の克服
差別・偏見を克服するために,今年3月に発表された「肝炎ウイルス感染者に対する偏見差別の被害防止ガイドラインを作成するための研究」の報告書(龍岡班報告書)を尊重して,国としての取り組みを強めることを大臣に要請しました。あわせて,感染症全般を防止するための「標準予防策」を医療機関や一般社会に徹底することで,B型肝炎についての不必要な差別的取扱いや社会的偏見を克服できることを指摘しました。
田村大臣からは,「龍岡班報告書」の重要性を認識しつつ,標準予防策についても徹底していくことが表明されました。

③再発防止策の実施へ
再発防止策については,予防接種時の注射器打ち回しという誤りがなぜ発生したかについて,基本合意に基づいて設置された検証会議の「提言」にあるとおり,まず厚生労働省自身がその組織・体制の問題点を検証する必要があると指摘しました。
この点については,「提言」の受け止め方について,私たちと厚生労働省との間で必ずしも認識が一致していなかったことが協議を通じて明らかとなり,田村大臣からは「ご指摘の点についてしっかりと検証する」との回答がありました。

■さらなる前進を求めて活動を続けましょう!
以上のとおり,今年の大臣協議では,3つのテーマについていずれも前向きの回答がなされ,とりわけ肝硬変・肝がん医療費助成については,実現に向けた道筋が示された重要な成果を得ました。こうした成果をかちとった運動の意義を確認するとともに,今後の活動をさらに強化していきましょう!