歯科の感染対策を考えるシンポジウム〜被害者が二度とあらわれないために
2017年6月24日、「歯科の感染対策を考えるシンポジウム~より安全・安心な医療を目指して~」を開催しました。
このシンポジウムは、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団が主催し、東京歯科保険医協会に共催していただき、患者団体、歯科医、国・厚生労働省の三者が一緒になって今後の歯科医療での感染対策を考えることを目標に開催したものです。当日は250人を超える方に参加いただき、熱気溢れる会となりました。
今後の歯科医療での感染対策を考えるために
B型肝炎訴訟は、幼少期の集団予防接種で感染した被害者を原告とする事件です。厚生省が注射針の連続使用をしないように求める通達を出した後も現場ではそれが徹底されないまま長期間が経過し、感染が拡大しました。私たちは給付金の獲得による個別救済だけではなく、このような被害者が二度と表れないための活動もしています。
2014年5月、読売新聞が、歯科のハンドピース(歯を削る医療機器で、ドリルなどを支える取っ手の部分で水が噴き出すようになっています。動きを止めるときに、口の中の液体を吸い込む現象が確認されているので、患者ひとりごとに減菌処置をすべきとされています。)が歯科医院の約7割で患者ごとに減菌処置がされていないことを報道し、厚労省は徹底を求める通知を出しました。感染の危険も否定できません。
歯科医院での感染防止対策の紹介も
シンポジウムでは、まず、全国B型肝炎訴訟原告団代表の田中義信さんから「B型肝炎感染被害と歯科への思い」について報告し、歯科医師で東京歯科保険医協会の理事でもある濱﨑啓吾さんから歯科の感染対策の現状と問題点を報告していただきました。濱﨑さんの報告は、ご自身の勤務する歯科医院での感染対策を紹介するもので大変具体的でイメージの持ちやすいものでした。また、厚生労働省医政局歯科保健課の山口聖士さん(歯科医師臨床研修専門官)からも厚生労働省の対策について報告をいただきました。
後半のパネルディスカッションでは、濱﨑さん、山口さん、全国B型肝炎訴訟原告団の梁井朱美さんをパネリストとして議論を行いました。
歯科における感染対策についてまだ十分ではないという認識を共有するとともにその原因についてもコストだけではなく、医療従事者の教育が重要であるという認識を共有することができました。
B型肝炎患者が歯科医院での問診でB型肝炎患者であると申告しにくいという問題について、歯科医師の濱﨑さんが、「そのような気持ちになる悪い歯科医院の対応があったことは理解できる。ただ、歯科医としては、患者さんの病状を知っていれば対応も違ってくるので教えて欲しい。例えば、肝臓で分解する薬を出さないという対応もできるし、病状によっては医科の先生と連携することだってできる」と発言されていたことが印象に残りました。また、厚生労働省の山口さんが、安心安全な医療を受けたい、提供したいという気持ちは全く国も同じです」と発言していたことも印象的でした。
厚生労働大臣との定期協議でも、調査を求めています
私たち全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団は国とB型肝炎訴訟の和解条件を定めた「基本合意」を締結した当事者として、毎年厚生労働大臣と協議をしています。この大臣協議では、裁判の和解迅速化や幅広い肝炎対策などについて要望を出していますが、2016年の協議で私たちはハンドピースの取り換えが現場で徹底されているかどうかについての調査を厚生労働大臣に求め、了承されています。
今回のシンポジウムは、今後の歯科医療での感染対策を進めていく第一歩になったのではないかと思います。
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