大人のラヂオ−B型肝炎訴訟について教えてください−
2020年7月10日「大人のラヂオ」(インターネットラジオの「ラジオNIKKEI」)に当弁護団の弁護士横山と原告の加藤さんがゲスト出演いたしました。テーマは「B型肝炎訴訟について教えてください」です。一部をご紹介します。
この記事は、ラジオの抜粋・要約になります。
ポッドキャストで、音楽以外は全て聞くことが可能ですので、是非お聞きください。
→ラジオNIKKEI ポッドキャスト(7月17日配信分)
今回「大人のラヂオ」で進行役をつとめるのは、東京肝臓友の会の米澤敦子さんです。
(「大人のラヂオ」の毎月第2週は「肝臓」に焦点をあてたお話であり、毎回進行役は米澤さんです。)
→東京肝臓友の会
目次
【1.はじめに】
1.1 訴訟の目的
1.2 原告団・弁護団って何?
弁護団に依頼するメリット
【2.訴訟の条件(ポイント)】
2.1 生年月日
2.2 持続感染
【3.よくある質問のご紹介】
3.1 B型肝炎の検査をしたことがない
3.2 父母がB型肝炎で、自分は母子感染だから提訴できないのでは?
3.3 書類集めなど大変なのでは?(効率的な書類集めのために)
3.4 母が他界している
3.5 母死亡で上の兄弟がいない場合
3.6 母死亡で上の兄弟がいない、資料も何もない
【4.費用について】
4.1 費用についてー和解するまでは15000円のみ
【5.キャリアの方の給付金以外の和解のメリット】
5.1 キャリア(50万円)なので面倒な手続きをしてまで和解しなくても良いと思われている方へ
こんにちは。東京肝臓友の会の米澤です。進行役をつとめさせていただきます。
B型肝炎訴訟東京弁護団の弁護士横山です。よろしくお願いします。
はじめに
訴訟の目的
肝臓友の会の方にも給付金をもらいたいんですが…というお問い合わせがすごく多いのですが、B型肝炎訴訟のことをよく分かっていない方もたくさんいらっしゃるので、まず訴訟の目的から教えていただけますか?
それは全ての肝炎患者の救済です。これは、B型肝炎訴訟の原告になれなかった方も含めて、ということです。
テレビCMを見て誤解されている方も多いのですが、B型肝炎であれば全員給付金がもらえると思ってる方がいらっしゃる。しかし、実際には原告になれない方も多いのですよね。その方たちのフォローも含めて、ということですね。
2、肝炎患者が安心できる制度づくり
・B型肝炎の訴訟は提訴するのに条件があり、残念なことに証拠がなく、原告にはなれない方もいます。しかし、その方々もフォローしていく活動をする、というのが弁護団の目標です。
※弁護団の詳しい活動についてはこちらをご覧ください→弁護団の活動
原告団・弁護団とは
皆さん、よく分からないと思うのが、原告団・弁護団についてだと思います。普通の法律事務所との違いなどを教えてください。
原告団は、弁護団から提訴をした方たちで構成されています。もちろん強制ではありません。ただ原告団に入っていると、いろいろな医療情報を得ることができますし、患者会的な活動もしてますので、ほとんどの方は退会されません。
積極的に活動されている方もいらっしゃいますが、そういうのが苦手な方もいらっしゃいますので、緩やかにつながりながら、創薬などの目標を持っていこう、というそういう組織ですね。
では弁護団とは何ですか?
弁護団は、一つの弁護士事務所ではなく、いろいろな事務所の弁護士が集まって全国の弁護団を作っています。
B型肝炎訴訟というと、給付金をもらう裁判、と思われてる方が多いのですが、あれは、それを根拠づける法律があるから給付金がもらえるのです。その法律を作るために、ものすごく大変な活動を担ってきたのが弁護団なんです。そして弁護団はその法律ができた後も、患者さんとともに医療環境の充実や創薬の実現のために活動を続けています。これが弁護団です。
全国で約3万人、東京(関東+山梨)だけでも約6000人(2020年7月現在)。
弁護団:法律事務所の枠を越えて、趣旨に賛同する弁護士が集まって構成されている。
全国で約700名。給付金をもらう根拠となる法律を作るために長年活動してきた。
弁護団に頼むのと他の法律事務所に頼むのではだいぶ違いそうですね
だいぶ違うと思います。簡単な事案は誰に頼んでも同じかもしれませんが、難しい事案、前例のない事案などは、全国700名の弁護士で情報を共有しますので、高いレベルの個別和解が実現できています。
なるほど。たくさんの事例を持っていて、それに照らし合わせて、和解につなげていくことができるということですね。
その通りです。そして、患者さんは給付金をもらっても病気が治るわけではありませんので、その後のフォローをどうするか、これが重要ですよね。
・原告団に入ると、数ヶ月に一度、原告団ニュース(会報誌)を受け取れる。
・医療情報の提供、医療講演会もあり、日進月歩の医療情報に触れられる。
残念ながら、まだB型肝炎はウイルスを消す薬がありませんから、それができるまで病気と上手くつきあっていく必要があります。みんなで原告団として緩やかにつながって、いろいろな情報を得ながら、病気と向き合うことができる、それが原告団の一番のメリットだと思います。
まさに私たちがやっているような活動ですね。私たちも給付金の相談をされても、まず一番に、ご自身が病気のことをきちんと理解されているか等が、とても気になってしまいます。自分の病気を知ること、自分の体の状態を把握することが、とても大事ですよね。
提訴の条件(ポイント)
提訴の条件(生年月日)
具体的にどういった方が原告になれるのでしょうか。
最初に確認していただきたい事は、誕生日です。昭和16年7月2日より前のお生まれの方だと、残念ながら提訴は難しいです。
※ただし昭和63年1月27日については、それ以降のお生まれの方でも、母子感染・父子感染その他の様々な立証で裁判可能な場合もあります。
提訴の条件(持続感染)
生年月日がOKなら、次は持続感染しているか(一過性感染ではないか)どうかです。おそらく血液検査等で皆さんがよく目にするのは、「HBs抗原」だと思うのですが、これが、6ヶ月以上間隔を開けた2時点で陽性ということが、一番身近に調べられるところだと思います。
なるほど。2回検査をするってことですね。
→既に持続感染の条件を満たしていると思われます。
・一時点の陽性結果しかない方(例:亡父が1回しか調べていない等)
→総合判断ということで提訴できる可能性はありますので、諦めずにご相談ください。
よくある質問のご紹介
検査をしたことがない
肝炎のウイルス検査は、お住まいの市町村や保健所で、低額または無料で検査可能だと思われます。各市町村によって異なりますので、そちらにお問い合わせください。ここで陽性が出た方は、今後どうすればいいのかお伝えしますので、弁護団にご相談ください
父親・母親がB型肝炎で、自分は母子感染だから、提訴できないのでは?
お父様、お母様が提訴の条件を満たす場合、実はお父様、お母様が提訴できるんです。そしてこの場合には、そのお子さんは母子感染・父子感染という形で提訴ができます。また、以前お医者様に「母子感染」と言われたので諦めている方も、実際に調べてみると違う方も結構いらっしゃいますので、一度ご相談いただきたいと思います
書類集めなど大変なのでは
弁護団から最初にお渡しする資料を見ると、やることがたくさんあるな〜と思って嫌になっちゃう方がいると思うんですけど、とりあえずお母様の検査だけしてご連絡いただければと思います。
お母さんの検査だけで良いのですか?
はい。なんでかというと、先にお話した生年月日と持続感染の条件を満たす場合、次にやってほしいのは「母子感染でないことの立証」だからです(※一次感染者の場合)。これができないと、ご自身のカルテをたくさんとっていただいても、残念ながら無駄になってしまう可能性もあります。お母様の検査はHBc抗体という、普通はあまり調べない検査が必要なので、弁護団から書式をもらってから、検査に行っていただくのが良いと思います。
お母さんに何度も検査に行ってもらうのは悪いですもんね
そうですね。お母様の検査結果がOKなら、ご本人のカルテや戸籍等、その他の書類を集めていくのが効率的かと思います。無駄がないように書類の準備をします。
なるほど。それでは、まずはご相談いただいて、そこから「こういう書類が必要ですよ」とか、「ここに行ってください」とか弁護士さんの指示の元に動かれるのがベストなんですね。
母が他界している
お母様が他界されてる時ですが、この場合は、上のごきょうだいの検査結果が必要になります。お母さんの(他者へ感染させる)ウイルス量は年齢とともにだんだん減ってきますので、上のごきょうだいが感染していないのに、下の子が感染していれば、これは母子感染じゃないね、という理屈です。これも特殊な書式なので、弁護団に相談して請求していただければと思います。
母死亡で上の兄弟がいない場合
この場合は、亡くなったお母様のカルテを探していただくことになります。
資料がないと諦めている方に、よくお話を聞いてみると、お亡くなりになるときに救急で搬送されていたり、別の病気で入院されたことがあるという場合があります。カルテの保存期間は5年とされていますが、入院記録だけは、結構残っていたりするんです。
そのため、病院に聞いてみるとHBs抗原マイナス(B型肝炎ではなかった)という記録が出てくる場合があります。
母死亡で上の兄弟がいない、資料も何もない
このようなケースですが、お父様がご存命の場合、お父様の検査結果から総合判断で和解している例もあります。
ええ!そんなことがあるのですか!?
そうなんです。とにかく諦めずにご相談いただきたいと思います。
費用について
次は、みなさんが気になると思われる費用について教えてください。
費用が高いんじゃないか、高いお金を払って和解できなかったらどうしよう、と心配な方もいると思います。まず、カルテ取寄せ等の実費は、すいませんが、ご本人さんのご負担です。ただし、和解する前にかかる金額は、提訴するための預かり金15,000円のみです。この間に何度相談しても無料ですので、心配せずに何度でも相談してください。報酬については、和解して給付金が入ってからの精算ですので、和解できなければその後にかかる費用はありません。ご安心ください。
キャリアの方が和解するメリット
キャリアの方ですと、給付金が50万円ですので、面倒な手続きを嫌がる方も多いと思うのですが・・・。
キャリアの方が和解するメリットは50万円の給付金以外にもたくさんあります。下にまとめましたので見てください。弁護団で提訴して原告団に入ると、最先端の情報がずっと入ってきます。キャリアの方もまず発症させないことが大事なので、是非その情報を受け取って欲しいと思います。
2、定期検査費用が無料になる(年4回まで)。
3、定期検査に行くと、定期検査手当15,000円が振り込まれる(年2回まで)。
4、キャリアの時に和解しておけば、病態が進行した場合に、簡単な手続きで差額の給付金を受け取れる。
4ですが、お母様の検査結果の資料(カルテ)などは時間が立つと、廃棄などでなくなる場合もあります。キャリアの方でもきちんと和解をしておけば、万が一後に肝がんなどに病態が進行した場合、差額の給付金が、すごく簡単な方法で受け取れます。ですから保険をかけるようなイメージでも良いかと思います。是非、ご相談ください。
上記は抜粋・要約です。
全てお聞きになりたい方は、ポッドキャストにてお聞きください。
→ラジオNIKKEI ポッドキャスト(7月17日配信分)
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