B型肝炎ワクチン定期接種化にあたり意見書を提出しました。

全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団では、6月22日、厚生労働省予防接種室長に厚労大臣宛の意見書を提出し、記者会見を行いました。
意見書の全文は下記の通りです。

B型肝炎ワクチン定期接種化の政省令公布にあたって

2016年(平成28年)6月22日
全国B型肝炎訴訟原告団 代表 田 中 義 信
全国B型肝炎訴訟弁護団 代表 佐 藤 哲 之

B型肝炎ワクチンの定期接種化を定めた政省令が本日公布された。
これにより、本年10月1日より、B型肝炎ワクチンの予防接種が、満1歳までに3回接種する方法で定期接種化されることとなった。私たちは、B型肝炎ワクチンの定期接種化にあたって、予防接種によってB型肝炎に感染させられた被害者団体として、以下のとおり意見を述べる。

1 ワクチン接種の安全性確保を徹底することを求める

先般、一般財団法人化学及血清療法研究所(通称「化血研」)が、40年以上にもわたって、承認を得た方法とは異なる製造方法で血液製剤を製造し、そのことについて隠蔽工作まで行っていたことが発覚し、業務停止処分を受けた。
同社は、ワクチンについても多くの種類を製造しており、国内における製造シェアは高く、B型肝炎ワクチンについては80%ものシェアがある。同社のワクチンについては、安全性に問題がないとされて業務停止から除外されているが、予防接種を受ける国民としては不安を覚えざるを得ない。
したがって、B型肝炎ワクチンを定期接種化するにあたっては、国民が安心して予防接種を受けられるように、使用されるワクチンの安全性について、あらためて厳格な審査を行うとともに、ワクチン製造業者への立入調査をより実効性のあるものにするなど、ワクチンの安全管理を徹底されたい。
また、安全な接種方法による接種を行い、さらに、ワクチン接種の安全性を担保するために、接種後の副反応情報を漏れなく収集して、これに対する評価検討を行って適切な対策がとれるように、万全の体制を組まれたい。

2 B型肝炎ウイルス感染者への偏見・差別を防止することを求める

B型肝炎ワクチンの定期接種化は水平感染を予防することを目的とされているが、B型肝炎ウイルスは日常生活での通常の接触では感染しない。
このため、B型肝炎ワクチンの定期接種化にあたっては、いたずらにB型肝炎ウイルス感染の危険性が強調され、感染経路に関する誤解に由来するB型肝炎ウイルス感染者に対する偏見・差別が助長されることのないように、国民への正しいB型肝炎の知識の普及、医療機関や保育園・学校など公共施設への指導教育が同時に徹底されるよう求める。
とりわけ、乳幼児期の集団予防接種における注射器の使い回しによる感染被害者である私たちB型肝炎訴訟原告団は、予防接種行政を実施する国に対し、こうした予防接種に伴う感染被害者がわが国には膨大に存在すること、その責任が国にあることに基づいて被害救済のための特別措置法が制定されていることなどを、偏見・差別除去のための啓発活動とあわせて広く国民に知らせていくことを求める。

3 セレクティブワクチネーションの強化を求める

(1)母子感染予防等に対する費用の全額公費負担

母子感染予防に関しては、当初は全額公費負担であったが、対象者が拡大したことによって、現在では、健康保険による給付がなされるだけである。いうまでもなく、母子感染は、HBウイルスの最も頻度の高い感染原因である。したがって、母子感染を阻止することが最も重要な課題である。感染リスクの高いところに対して十分な手当てをしなければ、感染拡大を防止することはできない。
よって、最も感染リスクの高い母子感染の予防を徹底するためにも、母子感染予防にかかる費用については全額公費負担されたい。
また、「B型肝炎ワクチンに関するファクトシート」においては、家族内の水平感染のリスクも指摘されており、今後出生する新生児については定期接種の対象となるとしても、既に出生した乳児については何らの手当もされないことになる。
したがって、家族内感染のリスクのある者(キャリアの同居家族)に対するワクチン接種についても、公費負担がされるべきである。
同様に、医療関係者や警察、救急消防等の職業上のリスクがある者等に対するワクチン接種についても公費負担がされるべきである。

(2)母子感染予防措置により副反応が生じた場合の取扱いについて

B型肝炎ワクチンが定期接種化されることによって、母子感染予防の対象者以外に対するワクチン接種によって副反応が生じた場合には、予防接種健康被害救済制度の対象となる。しかし、定期の予防接種の対象者から除かれる母子感染予防によって副反応が生じた場合、医薬品医療機器総合機構法に基づく医薬品副作用被害救済制度の対象になるに過ぎない。予防接種健康被害救済制度と医薬品副作用被害救済制度とでは、同じ被害を受けた場合でも例えば障害年金の額が大きく異なるなど不公平が生じることになる。この点、定期接種によるワクチンの接種も、母子感染予防措置によるワクチンの接種も、ともに人から人に感染することによるその発生及びまん延を予防するため、又はかかった場合の病状の程度が重篤になるおそれがあることからその発生及びまん延を予防するために行うという趣旨は同じである。同じ趣旨に基づき同じワクチンを接種して同じ被害が生じた場合、定期接種か母子感染予防かによって大きな差が生じることは不適切である。
したがって、母子感染予防措置により副反応が生じた場合の取扱いについても定期接種に準じて取り扱うようにすべきである。

以上